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街で生きる。街を出る。

 郡部に暮らしている人間が「まちに行ってくる」という場合は、最寄りの市や町の中心地に行くという意味で使う。自分が小中学生の頃は(石巻市と合併する前の河北町時代)、まちとは役場のある飯野川を指した。漢字を当てれば「街」が適当なのではないかと、なんとなく思う。
 その後、街とは言えないくらいに飯野川も寂しくなり、また合併もし、現在に至るまで「まち」は石巻の市街地を指す。勝手ながら、おおむねの印象だけどね。

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 先日ひっさびさにベーコンをこさえたのは、まちにあるこの肉屋さんが再開したことも大きい。[和牛乃亀山]。牛肉だけでなく豚、鶏、自家製のチャーシューなども旨いお店だ。津波で店内はめちゃくちゃになった。数百キロある冷蔵ショーケースがあらぬ位置に移動して、自店のものだけではない見たことのないもので埋め尽くされ、すべてがしかも泥に浸っていた。
 よく再開してくれたと思う。
 一度に使う豚肉は800g内外の塊を12〜15キロ、2万円内外。それまでは気が向いたスーパーで、特売バラ肉があれば「トクした」なんて気をよくして買っていた。が、塩漬けに手馴れてくると、どうも手触りや仕上がりにバラつきがある。他のに比べて異様に柔らかい塊、塩せきの最中に、信じられないくらいに水が出てくる塊が、気になってくる。
 いつも店頭に商品を満載している、回転の速そうな店の肉はどうなのだろう? そう思って亀山さんに頼んでみたら、とても塩梅がよかった。◯◯豚とかいうブランド品に走っていない、ふだん食としての豚肉に徹しているとこも好感が持てる。とにかく新鮮で、値段も決して高くない。実質的。

 これまで営業していた市中心部を、思い切って飛び出した店もある。
 アナゴ料理で人気だった[喜八櫓(きはちろ)]が、上品山の山すそにある北境集落の民家を改修して新しいスタートを切った。[喜八櫓 きた道]というのが、新店の名前。7月10日、父親の誕生日だったので、母も伴い昼飯を食べに行ってみた。
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 北境というのは地主さんばっかの集落で、スレート葺き(当然、雄勝産であろう)の立派な家が多い。(最近は取り壊してペナペナの新建材ハウスも増えてきた。二度と建てることはできない家なんだけど、現代の技術で住みやすく改修しようという発想がそもそもない。外野が言ってもしょうがないけどさ)
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 そのうちの1軒、屋根が高い民家。かつてはスレート屋根だったと思われ、天窓(そらまど)が見える。これも北境集落の家々には多いパターン。
 実を言うとこの家、改修前に一度中に入ってしかも酒盛りをしたことがある。東京の建築家Hさんが買って改修し住むという話、その前に飲もうぜということだった。相当放ったらかされていたようで、畳は抜けてる、建具はボロボロ。しかし天井の架構は見事で、何層にも重ねた梁や桁材がいぶされ、夜の闇の向こうに沈んでいた。さすが、お目が高いと思ったものだ。
 その後音沙汰がなくなって、ちゃんと改修したのかどうかもわからないままだった。紆余曲折はあったのかもしれないが、店として新しい命が与えられたわけで、実に喜ばしい。繁盛していて、ご主人にゆっくり経緯をうかがうゆとりはなかった。そのうち空いている時間にでもまた行こう。うちからはクルマで5分だし。
 かつて店があった石巻市中央からは、クルマで15分の場所。ご主人はそれなりに悩んだのではないだろうか。市街地からのお客さんが歩いて行き来する距離ではない。けれどクルマ生活の時代である。タクシーや代行を惜しまなければ(家族による送迎という方法もあるのだ)ためらう距離ではなかろうし、何より、素朴ながらも豪壮な古い農民家を利用した店造りは、市街地では叶わない。
 そばは福島会津の[雪室そば]だそうで、いわば豪雪利用したローテク冷蔵庫で保存し、製粉するらしい。じつにのどごしのよい蕎麦でありました。生ビールも。。。
by kawa-usso | 2012-08-02 13:57 | 震災を越えて。


ササニシキ偏愛の米農家兼ライター/フォトグラファー。みやぎ石巻(本宅)&北東北いわて支局(通称:花巻小屋)〜長大な北上川河畔の南北拠点から、東北6県の[農林漁業と食住の文化]を観て聴いて報告しています。


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