カテゴリ:教育ファーム。( 6 )

地大根の、光と陰。

d0060094_9314898.jpg 岩手県岩泉町は、県都である盛岡市から北東へ90km。北上山地のまっただ中にあります。石灰岩のギザギザした山の景観が印象的で、鍾乳洞も有名です。ということは、そう水がおいしい。石灰岩で濾過された水がごんごん流れるすばらしい川があります。
 町内の安家(あっか)地区もまた、アイヌの言葉で[清らかな水の流れるところ]だそう。ここに、営々と植え継がれてきた独特な大根があります。ただ[だいこん]といえばコレだったとか。いまでは安家地大根(じでえごん)と呼ばれます。
 小学校の生徒たちが、種を採りました。採種用に残していた大根は、地上部ごと一月前に抜いてカラカラに干していたもの。それを指で裂き、新聞紙の上に落とします。大きさ1〜2ミリ。30分くらいで900粒あまりが採れました。これを8月5日に蒔きます。
 東北を見渡すと、わりあい寒冷な地方に地大根や、同じアブラナ科である地カブがたくさん再発見されています。特に山形県は多い。この傾向について、在来野菜を研究する山形大学農学部の江頭宏昌センセは、こうおっしゃってましたね。
「在来カブや在来ダイコンの産地は蕎麦とも重なります。どちらも、米の豊凶が見通せる8月近くに蒔いても、初雪が降る頃に収穫できる。そして翌年まで保存できる作物です。そばがきを、カブの漬け汁にひたしながら食べる、そういう食べ方があるんです」
 つまりは、飢餓への備えであった一面が浮かんでくるのです。
 飢餓、飢饉とは私たちからは遠い言葉である気がしませんか。でも冷静に考えれば、現代の食はとてもとても安心できる状況ではありません。いまは経済活動が・・・金がなんとか機能しているから、全消費量の6割でも他国から買える。お金があっても売ってくれない時(そうなりつつある)、近くに農業がなければ、私たちは簡単に飢えるはずです。
d0060094_1020526.jpg 悲喜も光陰もあるのが歴史。そして歴史は決して進歩史ではありません。光も陰もぜんぶまるっと受け継いで行くのが地域の宝物。他にはない[じでえごん]の味を大切に活かしてゆく方角に、安家の、岩泉の未来はあると確信します。豊かに味わいましょ。
 食べ方はすりおろして味噌汁に入れたりするのが一般的だそうで。ちょっと辛みがあって、サンマに添えるのもいいみたい。漬けものにする家もあるとか。意外においしいのが、天ぷら。水分が少ない大根なので、コリコリした食感がおいしいらしい。秋が愉しみです。

 左の本は、安家と北上山域のムラ暮らしを読み解く良きアンチョコ。
 岡恵介「視えざる森の暮らし 北上山地・村の民俗生態史」(2008/大河書房 3360円)
 これに導かれながら何度か何回か通います。岩手における教育ファームの実施団体、[安家教育ファーム推進協議会]の嘉村さんから賜りました。ありがとうございます。
 どっかで見かけたな〜と思っていたら、おお、[blogとりら]
by kawa-usso | 2009-07-31 10:59 | 教育ファーム。

産地直行。

d0060094_8584282.jpg 昨今、最高の良食材はトーキョーの築地市場に集まるか、シェフや味にうるさい食べ手(食通なんて持ち上げるような書き方は死んでも書かん)が[お取り寄せ]するものらしいですね。んがしかし、それは、常にNo.2の味と理解するのが良識というものです。
 目の前の海から、畑から、採ってきたばかり、さりっさりの野菜や魚にかなうはずはない。あえてそこからはずれるものがあるとするなら、赤い肉類(豚や牛)のうまさは新鮮さではなく熟成度合いだと言えます。でもその食材が産まれた風土で味わう、ということもプラスαでちょっとは計上したいと思いませんか。
 千葉県市川市の高校生たち300名余りが、福島県は磐梯地区でサマーキャンプを実施しました。ヴィライナワシロで実施する、教育ファームモデル事業の一環です。ヴィラの農園で野菜を採って・・・というのが残念なことに雨でお流れ。でもまぁブルーベリーは摘みました。で、裏磐梯野営場へ移動して、(本当は自分で採るはずだった)地場野菜と、地場肉でLET'S COOKING! 
 指導にあたるヴィライナワシロの料理長は、山際博美シェフ。福島の食材を数年かけて丹念に調べ直し、それをヴィラの宿泊メニューに生かし、地域に活を入れるべくがんばっているすごい人。農水省が認定する[地産地消の仕事人]でもあるそうです。
 飯館牛のハヤシライス(PHOTO)、麓高原豚のカレーライス、会津地鶏のクリームシチューをこさえるのは、まさに奮闘すなわち戦いでありました(笑)。包丁が危うい。火がおこせない。ジャガイモが・・・煮えない(すごい)。
 乙女たちよ鍛えましょう。そして、食べ物を自ら作れない(作らない)人は、誰かに作ってもらうしかなことを知ってください。それが、海の向うの、いつ途絶えるかもわからない距離の人でもいいですか。
by kawa-usso | 2009-07-31 10:57 | 教育ファーム。

おいしい梅干しになりなさい。

d0060094_4553555.jpg 花巻小屋(わたくしの岩手拠点)は昨夜から本降りの雨であります。
 梅の実がなる頃の雨だから、梅雨。日本の暦とそれを現す言葉は、つくづく四季に寄り添っているものですね。いつも森羅万象をからめながら自分たちの暮らしをつくってきた。と言った方がよいでしょうか。梅干し作りもそのひとつです。
 宮城県丸森町の丸森東中学校に、梅干し作りをたずねました(学区内の自治会や女性部など地域まるごとが支援する形で[教育ファーム]事業の実施団体=丸東・改援隊をつくっています)。丸森は本県で最南端のまち。平地あり大河あり山ありの多様な自然、温暖な気候のもとで、農家は庭先に梅を植えてきました。おそらく、自家製梅干し率(そんなんあるのかよ?)は県下でもトップでしょう。
 いろはの「い」は、傷みのない美しい梅の実を選ぶこと。そんでもって水洗いしてヘタをつまようじでほじってとりのぞくこと。これは食感も左右します。なにせ20人近い手があるので、ひとつひとつのプロセスはとりかかれば数十分で済んでしまう。農家のおかあちゃんやおばあちゃんたちは、これを一人か二人でみんな行っているのだ。家族のことを考えずにできるはずはありません。あちこちで書いますが、おいしいさを作るのは腕とか技術も大切だけど、つまるところは誠意。家族の健康まで考えて作っていることが大切。
 梅干しは弁当に入れるとごはんが傷みにくい、食あたりしないといわれます。青梅を摺り下ろして煮詰めた梅肉エキスは、最新の薬学技術で数億円かけてあみ出される抗生物質まっツァオの強い抗菌力があることも知られてきました。
 この先、塩漬け梅からは[梅酢]が上がってきます。そしたら、空模様を見計らって天日干し。太陽は顔を見せてくれるでしょうか(日食が近いっけねえ)。先は長いぞ。
by kawa-usso | 2009-07-19 05:47 | 教育ファーム。

有り難い=ありがたい。

d0060094_1018127.jpg [教育ファーム]12団体の取り組みは、いずれ食べることがついてまわります。
 明成高校調理科[リエゾンキッチン]の生徒たちが小学校児童と行った大豆の種蒔きでは、シェフの卵たちが作るアッチッチの豚汁をいただきました。味噌はもちろん、学生たちが昨年度の教育ファーム事業で育てた大豆で仕込んだもの。インスタントと違って、素性のわからない添加物など入っているはずもなく、豚肉と根菜ひとつひとつの味がわかる直球勝負の豚汁です。
 NPO法人オリザ・ネットが実施した調理体験では、信じられないほど味の濃い豆腐をこさえて食べました。これは大豆の味とともに、指導に当たった師匠のウデも味わうことになりました。なにしろ、参加者が固めた豆腐と、師匠が固めた豆腐の味が違うんですから。豆腐を作って13年の凄味です。

 話変わってある日。行きつけの喫茶店のカウンターで、その店の常連の野菜農家が、マスターとこういう話をしていました(当方は聞き耳を立てていた訳ですが)。
「自分の舌にあう、より[安全・安心な]ものが、食いたいときいつでも、食いたいだけいくらでも、しかも安く手に入ることが当たり前と思われてないかね」
 それが消費者に保障される当然の権利だと考えている人もいるでしょう。食べ物は実に多くの手をかけて育てられ、採集され、加工されて箸の元へ届きます。でも簡単には有り難いことなのだということを、表層の言葉でなく実感している人がどれだけいるのだろうか。と思ってしまいますわなぁ、農家たった300万人、平均年齢60歳超、国内自給率40%、あるいは最近の[格安弁当戦争278円]なんて数字を見ると。
 もしも、「うまいものが食べたいだけある」ことが当然の権利だとするならば、その義務は誰が負いますか。議員さんや行政には、あるかもしれない。そのような社会をつくるべく汗を流す人なのだから。「分担社会なのだから、農家にも義務がある」と考えますか。では、たとえば農産物の価格について、農家が意欲をもって再生産にとりくめる価格を支払った上で食べる義務が、消費者側に生じませんか。

 食に対する考え方を、子供たちや学生だけでなく、消費者や、農家自身もまた見つめ直さなくてはいけないと思います。

公式サイト[教育ファームねっと]
by kawa-usso | 2009-07-10 11:21 | 教育ファーム。

気がつけば、最先端男子。

d0060094_2035305.jpg 出先で食堂やレストランに入らず、井川メンパにもった[のり弁]で済ませる日が案外あります。これってつまり弁当男子じゃん!・・・何か相違はありますか。
 本日は、NPO法人せんだいプチファームが、ジャガイモ堀り他を実施した。収穫後のランチタイムは、集まったみなさんが持参した弁当を、わけあいつつ。これも各位に箸を出していただいた。霧雨の中、みんな時間を忘れて土と取っ組んでいましたね。
 農場長のブログに、なんか見覚えのある後ろ姿が載っているが、あまり気にしないようにしよう。

公式サイト[教育ファームねっと]
by kawa-usso | 2009-07-04 21:04 | 教育ファーム。

私感、食農教育。

a0118120_2021129.jpg 長文です。お覚悟。

 当ブログでおわかりのように、うまいものの話が好きである。同時に、どこの何がこれこれこう美味しくて、という話にとどまらない傾向も気づいてもらえると思う。
 酒、肴、菜、飯〜口に入るものすべてには由来あり。あたりまえや、と軽くツッコまれそうだが、当たり前の理がほんとうに理解されていたなら、たとえば食糧自給率はもっと高く維持されているのではないか。そう考えるのは単純だろうか。
 自分に限って言えば、生まれた家が米農家だった。ぐるりを田畑に囲まれた、何のヘンテツもない農村である。長じて今は、農家や畜産家や漁業家や、漬け物だの豆腐だのを加工するかーさんたちとか、食の作り手を取材と称して訪ねるようになった。ふつうの人より、食が生まれる光景に立ち会う機会はたぶんずっと多いだろう。
 そうした生家と仕事のアドバンテージはおいといて(withゼスチャー)、としても、ただ食べるだけより作り手を知って食べる方が、おいしさも幸福感もずっと大きい。他の人も同じであってほしいし、まだ知らなければ早く気づいてもらいたい。
 かーさんが焼いてくれたアジの塩焼きにも、マ●クでかぶりつくハンバーガーのパテにも、イタリアンの名店で「やっぱプロねん」と納得する有機野菜にも、そこまでの物語がある。具体的には、食材が育まれた風土であり、そこで暮らし、栽培し、漁船を操り、豚や牛たちにエサを与え糞を処理する人たちの汗が、幾重もの生業の積み重ねがある。
 うまいものが、食べたいときいつでも、食べたいだけ、しかもより安価に手に入る、それが当たり前の生活権だと思われているのなら、いろいろな意味で怖い。海外で買い負ける大豆、魚。そうは問屋が卸さんよ、という世の中に、ほんとうになってきているのだから。じゃ国産があるじゃないか、と振り返ったところで目に入る農家漁師は、みんなお顔も手も深くしわが刻まれた人たちばかりだ。
 そうした食材の、身近にいる作り手を支援できるかどうか。その一歩として、野菜や米の作り方くらいは、知っておいた方がいい。知っていなきゃならない、とまで買いかぶりたいと思う。その場と機会はかつて家庭にあった。もちろん、食育という言葉が言われるはるか以前だ。3食つくるかーさん、農作業をするとーさん、ジイちゃんバアちゃん。家の周辺はよっぽどの都心でなければ農家と家畜に囲まれ、田畑の生き物にあふれ、農作業を子供が手伝わされていた。スイカドロボーや柿ドロもあったというより自分自身がやったけど(笑)、それはそれで食べ物との濃密な接点である。
 自然に身に付けば良いものであはあるが、いま家庭に食を教える人が、教えられる人がいない。祖父母は別宅、共働き。しかも父母さえインスタントや[中食]の恩恵を最も受けて育ってきた世代だ。
 昨年から[教育ファーム]という、農林水産省の支援事業が始まっている。今年は全国で118の学校やNPOが参加し、実質的な食農教育を目指して約9カ月間、それぞれの地域でプログラムを実施する。要は植えて収穫するだけ、ではなく子供たちの「スイッチを入れる」プロセスと工夫を重視する。いずれ効果も測定分析し、他者が容易に応用できるマニュアルを制作する。その東北ブロック事務局を務めることになった。東北の12団体のプログラムを把握し、教育ファーム公式サイトに折々の体験学習を取材しレポートとして出稿。本部事務局である(社)農山漁村文化協会をサポートする。

 今月から各団体の取り組みが始まった。とりあえず、各地の田んぼや畑にはわーのきゃーのと、黄色い声が響いてまことにぎやかである。公式サイトに上げたレポートのこぼれ話や雑感を、当ブログのカテゴリー[教育ファーム]で始めていこうと思う。
by kawa-usso | 2009-06-22 20:24 | 教育ファーム。


ササニシキ偏愛の米農家兼フリーライター。みやぎ石巻(本宅)&いわて花巻(小屋)……長大な北上川河畔の南北拠点から、東北6県の[農林漁業と食住の文化]を観て聴いて報告する「じぶんメディア」


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