「されど」は言わず。
チゲさん(仮名)は、岩手南部のあるまちで、養豚農場を経営している。特に●●豚というブランド化はしていない。するつもりがない、どこ吹く風と飄々しているのだ。
「たかが豚肉なんだからさぁ、グルメだのこだわりだのって言いたくないわな」と、石橋凌に似た(個人的な見立てよ)顔で笑う。●●豚とか●●豚を送り出す経営者が聞いたら「おたくのノーブランド豚と一緒にするな」と息巻かれそうななことを、さらりと言う。
でもチゲさんが育てる豚はおいしい。チゲまだむが調理したトンカツと、生肉を譲り受けてこさえたスモークで味わった。水は地中深く掘削した井戸水を与えているし、餌とともに国内某所から取り寄せる「土」を食べさせているという。
「家畜ってのはさ、基本的にみんな貧血状態なんだ。特に子を産む母豚はね。つまりは血中のミネラルが不足している」
土はミネラルの塊、そのものと言ってもいい。汗をかいた後に塩辛い味付けがおいしいように、生き物の舌は、足りない栄養素をおいしく感じるようにできている。だから豚っこたちは、ヒミツの土をもりもり食べるのだ。他にも、うまい豚を育てる心血の注ぎ方には余年がない。その辺の話はじつに楽しくて、コーヒーをすすりながら聞いていると時間があっ!ちゅう間に過ぎてゆく。
「それだけ手をかけているのは”こだわり”じゃん。こだわってるなら、率直に言え! そうして何悪かろう」とツッコミが入りそうな気がする。でも、こだわりかどうかは、個人の認識の範疇である。
チゲさんはPR(=ブランド化)を必ずしも良しとしない。代わりに、「たかが豚肉」と公言するのだ。ふつうは「されど豚肉」と必ず続けるものである。チゲさんは、決して「されど」を口にしない。腹の底で、自分が育てる豚の味には自信はもっている。でも言わない。粋じゃないか。
じぶん的には、ブランド化を必ずしも否定するつもりはない。名は体を表すというように、良い中身こそネーミングやキャッチフレーズも含めた外見にあらわしてしかるべき、と思う。デザインの意義もそこにあるのだ。でもPRをプライマリとするあまり、誇張や美化、「グルメ」、流行りもんレベルの 「こだわり」訴求に頼る売り方には明確に異を唱える。そんなつまらない言葉よりも、チゲさんのように、自信を抱きながらも寡黙で誠実な生産の方針こそ好ましく、信頼に足る。
チゲさん自身がPRしないのだから、一般の人が彼の飼育法や方針を知る方法はほとんどない。小生がチゲさんと知り合えたのは、個人的な出会いと機会のたまものである。そこを差っ引いてチゲさんの言葉に本質を探りあてるならば……。
要するに、豚肉はたいそうな贅沢食じゃないのだ。チゲさん自身が生産する豚だけとは言わず、ごくふつうの豚肉を(でも、やっぱ地域産、国産!)、じゃんじゃん食ってくれと、食べ手(消費者)を励ましているのだよ。
大事なことは、スタイルとしてのブランド化、などではない。絶対に。当方もブランド化なんぞはともかく、「たかが米、たかがササニシキですよ」といつも言えるようでありたい。
(けっこう微妙な論を展開している。当方はいわゆるコピーライティングに文章作法を学び、20代をその仕事に徹してきた。純然たるアドから離れて久しいからといって、広告やPRやブランド化の悪口を言うのはフェアじゃないと言われるかもしれないが、ま、はっきり言えば僕は「宗旨替え」したと言っていい)
「たかが豚肉なんだからさぁ、グルメだのこだわりだのって言いたくないわな」と、石橋凌に似た(個人的な見立てよ)顔で笑う。●●豚とか●●豚を送り出す経営者が聞いたら「おたくのノーブランド豚と一緒にするな」と息巻かれそうななことを、さらりと言う。
でもチゲさんが育てる豚はおいしい。チゲまだむが調理したトンカツと、生肉を譲り受けてこさえたスモークで味わった。水は地中深く掘削した井戸水を与えているし、餌とともに国内某所から取り寄せる「土」を食べさせているという。
「家畜ってのはさ、基本的にみんな貧血状態なんだ。特に子を産む母豚はね。つまりは血中のミネラルが不足している」
土はミネラルの塊、そのものと言ってもいい。汗をかいた後に塩辛い味付けがおいしいように、生き物の舌は、足りない栄養素をおいしく感じるようにできている。だから豚っこたちは、ヒミツの土をもりもり食べるのだ。他にも、うまい豚を育てる心血の注ぎ方には余年がない。その辺の話はじつに楽しくて、コーヒーをすすりながら聞いていると時間があっ!ちゅう間に過ぎてゆく。
「それだけ手をかけているのは”こだわり”じゃん。こだわってるなら、率直に言え! そうして何悪かろう」とツッコミが入りそうな気がする。でも、こだわりかどうかは、個人の認識の範疇である。
チゲさんはPR(=ブランド化)を必ずしも良しとしない。代わりに、「たかが豚肉」と公言するのだ。ふつうは「されど豚肉」と必ず続けるものである。チゲさんは、決して「されど」を口にしない。腹の底で、自分が育てる豚の味には自信はもっている。でも言わない。粋じゃないか。
じぶん的には、ブランド化を必ずしも否定するつもりはない。名は体を表すというように、良い中身こそネーミングやキャッチフレーズも含めた外見にあらわしてしかるべき、と思う。デザインの意義もそこにあるのだ。でもPRをプライマリとするあまり、誇張や美化、「グルメ」、流行りもんレベルの 「こだわり」訴求に頼る売り方には明確に異を唱える。そんなつまらない言葉よりも、チゲさんのように、自信を抱きながらも寡黙で誠実な生産の方針こそ好ましく、信頼に足る。
チゲさん自身がPRしないのだから、一般の人が彼の飼育法や方針を知る方法はほとんどない。小生がチゲさんと知り合えたのは、個人的な出会いと機会のたまものである。そこを差っ引いてチゲさんの言葉に本質を探りあてるならば……。
要するに、豚肉はたいそうな贅沢食じゃないのだ。チゲさん自身が生産する豚だけとは言わず、ごくふつうの豚肉を(でも、やっぱ地域産、国産!)、じゃんじゃん食ってくれと、食べ手(消費者)を励ましているのだよ。
大事なことは、スタイルとしてのブランド化、などではない。絶対に。当方もブランド化なんぞはともかく、「たかが米、たかがササニシキですよ」といつも言えるようでありたい。
(けっこう微妙な論を展開している。当方はいわゆるコピーライティングに文章作法を学び、20代をその仕事に徹してきた。純然たるアドから離れて久しいからといって、広告やPRやブランド化の悪口を言うのはフェアじゃないと言われるかもしれないが、ま、はっきり言えば僕は「宗旨替え」したと言っていい)
by kawa-usso
| 2010-11-10 21:24
| 農都共棲(農と住む)。