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ヘタになった?

 朝から台風並みの雨と風。
 低気圧のスピードが遅いので、もうしばし長引きそうだ。
 通過したあとは風の方角が東(いま)から、北風に、北西にと変わってくる。
 まちの保存樹木が折れた倒れたというニュースは、そんな吹き返し(つまりそれまで耐え忍んできた力とは別方向からの負荷)によって、いっちゃう場合が多い。

 2〜3週前のやはり暴風の後。とある田舎道で、通行止めと迂回にでくわした。数百メートル先で道路沿いの木が倒れかかり、伐採作業が行われているという。珍しいことではない自然の理で、樹木にも臨終はやってくる。

 それはそれとして、どうも最近の我々は身の回りの樹木に観察がいたっていないような気がする。いきなり倒れた、いきなり枝が落ちてきた、ケガをしたクルマが壊れたという突発性が、ニュースでは拡大されやすい。が、本当はていねいに観察していれば予兆に気づいたケースもあったはずだろう。つまるところ人は、草木との付き合い方がヘタになったのではないか。

ヘタになった?_a0118120_14224368.jpg

 住まいのまわりに屋根を越えるような樹木を当たり前に備えた時代、人はもっと木をよく見ていたと思う。倒れそうなものは、その前に伐採する。用材は住まいに、家具や道具に、枝の1本まで畑の支柱などに使い尽くす。そして、伐った跡には新しい苗木を植える。
 それが住まいのまわりの安全を保つことだったし、暮らしを営むことそのものだった。
 いま、屋敷のまわりにある木々は不遇の時代である。その背景は、建材の進歩も大きいのだろう。鋼板葺きや耐震瓦の施工、あるいはアルミサッシの普及で、家そのものが防風も含めて耐候性を高めた。やにわに、防風林のマイナス面が目につき始める。葉っぱが雨樋に詰まる。時折、大枝が落ちて家に当たる。いずれ倒れる。年によっては毛虫が大発生する。
 所有者がいちばん怖れるのは、公道に面した木の倒伏だ。往来を邪魔するだけならまだしも、通行人や車両にケガ損害を与えたら賠償ものだから。
 そういう理由で、屋敷のまわりの大樹はことごとく伐られ、コンクリートブロックなどをぐるり巡らすことになる。住まいの前面には、決して軒の高さを超えないような木を中心に庭ができる。

 写真の居久根(イグネ:旧仙台藩領の方言=屋敷林)はすごい豊かさを備えている。春には林床に山菜が十数種出てくる。林間に置いたシイタケの原木からは、産直に出荷できるほどの収穫がある。クリが実る他に、根元には数年に一度マイタケまで出る。カキが実って、ばあさんの手仕事で干し柿ができる。今年のような猛暑の炎天下も、蒸散作用で少し涼しかったに違いない。言うまでもないが、ブロック塀にそのような機能はない。

 喪失感を覚えるほどの家主さんなら、伐採しきる前に思いとどまる望みがあるやもしれない。しかし実際は……用材が欲しければ、DIY店で買えばいい。山菜も干し柿も、いや干し柿以上においしくて多様なスイーツも街で売っている……屋敷林、なくても特に困らない。
 世知辛くなった、と古臭い自分は思う。
ヘタになった?_a0118120_14233479.jpg

by kawa-usso | 2010-12-22 15:15 | ●住めば都的トウホク。


ササニシキ偏愛の米農家兼ライター/フォトグラファー。みやぎ石巻(本宅)&北東北いわて支局(通称:花巻小屋)〜長大な北上川河畔の南北拠点から、東北6県の[農林漁業と食住の文化]を観て聴いて報告しています。


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