金物店主の言葉①

 「そういえば高長(たかちょう)さんは、どうしておられるだろう」
 石巻のまち中で、並んで歩くブン屋のOさんに話を振った。
 「亡くなったじゃないか。知らなかったの?」
 「うそ。。。」の後、二の句を失った。
a0118120_16123798.jpg 市の中心街に、高長(たかちょう)金物店はあった。瓦屋根で貫禄たっぷりの町家に、台所用品や日曜大工のよろず品々、若干のアウトドアグッズまでをみっちりと収めた姿。小さな店頭ディスプレイが季節折々に変わり、ご主人の粋な遊び心が道にやさしさを添えていた。隣に立つレンガ造りの老舗陶器店[歓慶丸]ビルがつとに有名だけど、僕にとってはそれよりも高長商店の健在な姿がこの界隈を通る楽しみのひとつになっていたのである。
 店主の高橋譲さんは、クルマの中で、奥さんとともに発見されたらしい。
 震災後、気にかけていない訳ではなかった。店は取り壊されて更地になってしまったし、「自分の代でおしまいだ」とは言っていたけれど、どこかで元気にしておられると思っていた。いや、思い込んでいた。
 すぐ安否を確かめていたとして、それで死者が蘇るわけではない。それでもなお、1年以上も放ったらかしにしていた自分は、やはり大馬鹿者だ。どうしようもなく、なんと失礼千万な奴だろう。

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 高長さんのことを初めて目に止めたのは、三陸河北新報社の圏域紙「石巻かほく」紙上で、一般が原稿を寄せる随想のコーナー「つつじ野」であった。「ことばの不思議」と題して始まった800字余りの稿が、軽やかに読める。けれど金物屋さんが、なぜこんな外国語、というか言語史に詳しいのか? さらっと披露する知識の、その奥はまだまだこんなものではないと思わせ、言わんとすることも、ある質量をともなってすとんと腑に落ちる。プロフィールを見て溜飲を下げた。京都外語大学卒、文献学、比較言語学を専攻。商社勤務の後に高長金物店を後継。

 確か、全9回を切り抜いて保存していたはず。探したら、あった!コピーを取ってスクラップしていたのだ。いま読み返しても新鮮。なのでこれから2回ずつ、ここに紹介していこうと思う。高長さん、奥さん、どうか安らかに。せめてこうして、あなたのメッセージをいまいちど、刻みつけておこうと思います。生涯忘れないよ。 クリックで左右960pixに拡大します。
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 連載3回以降、話はどんどんおもしろくなります。
by kawa-usso | 2012-07-13 16:40 | 震災を越えて。


ササニシキ偏愛の米農家兼フリーライター。みやぎ石巻(本宅)&いわて花巻(小屋)……長大な北上川河畔の南北拠点から、東北6県の[農林漁業と食住の文化]を観て聴いて報告する「じぶんメディア」


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