蔵の住み心地、豚の味わい。

 宮城県北のとある町で暮らす友人(といっても少々年上)は、蔵を改修してお客さんが来るのか来ないのかわからん(笑)ジャズ喫茶を営む。おそらく20年近く通って、他のお客さんと同席したことは数えるくらいだから、流行っていないことはうん、事実だろう。もちろん、本業は他にあるのだ。わたくしはと言えばカウンターでマスターやマダムと、この前こーんな旨いもんを食ったよ―という話をするのが大好きで、ジャズの方はからっきしわからない。でも選曲はいつも陰さす蔵の宇宙にぴったりで、コクが深〜い珈琲の味がまたこの空間を格別のものにしている。
 その奥には、住まいとして使っている蔵が並んで立つ。いまでこそ、いわゆる「古民家」をリフォームして暮らしたり、カフェを営んだりという生かし方は、決してめずらしくなくなった。むしろ暮らし方のひとつの文脈として認知されていると思う。スタイルというかファッションと化しているような印象ももつが、友人夫妻が蔵を解体しなかった理由はただ一つ。「失くしたら二度と作れないものを壊すのはやめよう」ということだった。
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 リビング/ダイニングに敷いた石の床を見たときは息を呑んだ。表面は水平ではなく、微妙に凹凸があるものの平滑で、とても足の裏に心地よい。刻み跡が残る太い柱、梁と桁の木組み。ざっくばらんを絵に描いて額縁に収めて花を飾り付けたような(笑)マスターと、東京から農村のまっただ中へヨメにきた品のよいマダムは、風のように軽やかに住みこなしている。

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 先日、マスターの本業である養豚農場で産した豚さんを、わたくしがベーコン、ボイルハムに加工し、皆で味わうという会が急遽催された。@@豚なんて特に名前がついた豚肉ではない。ふつうに手をかけ、ふつうに育てた。これは手塩にかけていないということではない。交配して、産ませて、太らせてという一連の育成には、餌から水から並々ならぬ気を使っている。ただそれはこだわりと称してブランドやストーリーをつけくわえるほどのものではない。そういう自認がマスターにはある。それよりも、健康に育って元気のいいやつが「うまい!」という個体差こそおいしい豚肉の真意、と。僕もそれを疑わない。
 住まいも、育てる豚肉の味わいも、本人の人柄が映っている。
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by kawa-usso | 2013-10-21 23:37 | 雑感、いろいろ。


ササニシキ偏愛の米農家兼フリーライター。みやぎ石巻(本宅)&いわて花巻(小屋)……長大な北上川河畔の南北拠点から、東北6県の[農林漁業と食住の文化]を観て聴いて報告する「じぶんメディア」


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