平孝商店のこと。

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 しっかりした手作りの道具の類が見直されていることは、定着したムーブメントみたいだ。書店の店頭では、手仕事もんもんを特集した雑誌や書籍が、けっこうな居場所を確保しているし。あちこちで新旧の手仕事市、クラフトフェアが次々と旗揚げされて、作る人と使う人が直接つながる場も増えているようだ。喜ばしいことであろうと思う。
 昨今は中介者を省いてダイレクトにつながることを良しとする評価もあるけれど、手作り品を鬻ぐ専門店や雑貨屋さんが不要かといえば、そういうものでもない。
 一連の動きの中で、いま再び光が当たっている印象を受ける岩手県北部。昔から続く手仕事の郷である。竹細工、木工、手織り、ホウキグサから育てた手編みの箒……。そんな産地のまっただ中、一戸町(いちのへまち)に平孝商店はある。まぁムラのよろずやさんだ。近頃は全国どこでもホームセンターが大きな顔をしているが、ふだん使いのものが大方揃う歴史ある店、愛顧する町民は多い。


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直せるものを売る。
 主な品々の仕入れは、メーカーや職人、工人との直接取引。そして国産品を貫いてきた。使い捨てならより安価な品はある。けれど長く使えるものが結果的には安く、買い手のためになる。道具の修理も取り次ぐし、いわば直せるものしか売らない。そうしたケアは、製造者が海の向こうにいたらできることではない。
 いま更新はされていないブログに、震災直後、平孝さん(平野祐二さん)はこう綴った。
 「工場を目の前の費用だけ見て海外移転されては、そして日本製の品質を捨てては、ある意味生き残る道はなく経済も成り立たない。いまに始まった事ではなく、以前からずっとそしてこれからもおそらくずっと。
 産業の空洞化が失業率を上げている事は間違いないでしょう。価格の安さは確かに大きな魅力かもしれませんが、先々の事を見据えた先行投資〜日本製を作って日本製を買って使う事も大事です。
 計算上の大きな数字でいえば、世界を相手に価格競争にも勝てるような大企業の数字をまとめた方が早いでしょうが、現実は庶民の暮らしが一番なのです。何度でも言います、書きます。MADE IN JAPAN。これこそが日本の復興には必要不可欠な事です」

[ PHOTO上/灯油ランプは部品1点1点が異なる町工場製。どれが不具合になっても、その部品を取り寄せれば使い続けられる。逆を言えば、どこか1社がつぶれたら、もうこの新品は作れない。壊れたら、THE END.]

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売るプロの意義。
 近郊の作り手から集まる手仕事品も、平孝さんはまとめて買い上げる。ぽつん、ぽつんと売れるよりも、作り手にとってはずっとありがたい。そしてまた、その出来栄えをきちんと批評する。たとえば箒なら、「元の部分をもう少し丁寧に編んでください。そうしたらもう少し高く買いますよ」などと。クラフト市などで買うユーザーが、使いにくさや改善のアイデアなどを、ともすれば言いにくいことを、どれほど直接アドバイスしてくれるだろうか?
 店がプロならば、お客さんも道具を使うプロ。優れた品を、もうどうしようとも使えない、というところまで使い倒す暮らし方が当たり前に身についている。また箒の話になるけれど、地元では「箒をおろす」という言葉をよく使う、と平孝さん。座敷を掃くのに長年使っていた箒が、穂先がちぎれて隙間が増え、硬くなってきたところで新しい座敷箒を買う。古い箒はこれで御役御免、とはならない。土間を掃く箒に役目替えする。これが「座敷箒を土間に下ろす」。さらに穂先が固く短くなったら、土間から外庭の箒として「下ろす」。そうして10年近く持ち場を変え使い続けて、ようやく、1本の箒は役目を終えるのである。
 懐古でもない、スタイルでもない。当たり前の暮らし方でつながった店とお客さんは、とても理想的なありように思えるのだ。
by kawa-usso | 2015-06-16 02:45 | ●住めば都的トウホク。


ササニシキ偏愛の米農家兼フリーライター。みやぎ石巻(本宅)&いわて花巻(小屋)……長大な北上川河畔の南北拠点から、東北6県の[農林漁業と食住の文化]を観て聴いて報告する「じぶんメディア」


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