季刊[住む。]取材から1年、はまぐり堂へ。
■半農半筆〜あるいはPROFILE
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村ににぎわいを。まちに交流を。
過疎地域のあっちでもこっちでも続いているトライアル。成功事例とか、「移住定住者ン十人」と伝えられるスポットも耳にする。容易なことではありえない。それでも自分が直接たずねた中で、ここはなんとかなるのではないか、と感じられる場所がある。[3.11]の津波で被災した、牡鹿半島の蛤浜(はまぐりはま)だ。「なんとかなる」とは、自らの意志と職能で外からのにぎわいを常に集め、定住者を増やしていく目算が立っていく、ということ。震災前と同等の暮らしを取り戻すのではなく、新たなその土地らしい暮らしを整えていく創造でもある。拠点のカフェ「はまぐり堂」は、心地よさや「今っぽさ」が耳目を集めるけれど、足取りは地道そのものだ。思い描く未来に一歩ずつ近づいている、どこよりも強い足音を、蛤浜には感じる。
昨年の11月、季刊「住む。」52号の記事「再び、住む。」取材のためにたずねた。あれから1年。たまにコーヒーを飲みに立ち寄ってもいたが、代表の亀山貴一さんと話をするのは久しぶりだ。
―取材から一年経ちました。スタッフが新しくなったそうですね。
亀山 スイーツを作っていた1人が独立して、佐沼(石巻から北へ40kmのまち)にカフェを開きました。パンを焼いていた1人も卒業。新しく、三本木の天然酵母のパン屋さんで働きながら、鳴子で里山カフェとかイベント企画に取り組んでた人、体にやさしい食に興味がある方が入ってくれました(地名はいずれも宮城県内)。人数的には1人増の7人ですね。蛤浜創世の第二期に入ったように感じています。
―ゲストハウスに予定していた隣家もショップになりました。
亀山 はい、仙台で古道具などを商う「紫山(しざん)」と、石巻・牡鹿周辺のクラフトを扱います。それと、ダルちゃん(スタッフ島田暢さん)が作る家具とか、鹿皮や角のクラフトも始めました。今日はダルちゃんが鹿の解体をしに出かけているんですよ。
島さんは、はまぐり堂を立ち上げる当事からのスタッフ。重機免許を持ち、手先が器用で、建具や左官仕事、木工内装などを、オリジナリティたっぷりの発想でこなしてしまう、蛤浜のザッツ・クラフトマンだ。牡鹿半島に生息する鹿の肉は、これまでもカフェの香ばしいカレーに変身して人気を集めてきたが……。
亀山 この前、私とダルちゃんで狩猟免許とったんです。まずは罠の。いずれ鉄砲もと思っているんですけど。京都で狩猟サミットがあって行ってきまして、先進事例がいっぱい集まっていました。自分たちにもできる!って、確信して帰ってきたんです。
いま若い人が狩猟に興味を持っていますよ。猟師さんの高齢化が進んで、鹿は増えていますけど、環境を守りながら共存していく方法を探している人が全国にたくさんいる。これまで猟師さん頼みだったものを、自分たちの力で、駆除をしながら余すところなく活用していく道を探し始めています。皮細工や角クラフトも、ダルちゃんが作ってくれるんですけれども。
―僕も昨年、鹿の解体を見学して、鹿肉料理も食べる催しに参加してみました。イタリアンのシェフらと猟師さんの企画でしたけどね。遠いと思っていた狩猟が、身近なものに感じられました。
亀山 農業とか漁業は見えやすいけど、猟の世界はこれまでなかなか見えませんでした。野生動物だったものが、解体が進むほど、だんだんと美味しそうになっていくんですよね。肉の味も当初は固くて臭いのかなと思っていたけど、ぜんぜんおいしいんですよね。今度鹿肉の大和煮缶を売りだしました。「木の屋石巻水産」さんとのOEM連携で。
石巻、河北、女川の猟友会の共同で利用できるような施設・仕組みを作って、この地域資源を使っていけないかなという思いはありますね。北海道が最先端の地で、向こうではスーパーで売ってたり、子どもたちの給食に出されていたりするんですよ。ふだん食とか食育のレベルまで行ってる。店ではジビエとしての高い価値も保ちながら、子どもたちにも広めながら、生業として成り立っていくようにしたいですね。
―家具は蛤浜の木ですか?
亀山 地元の製材屋さんから仕入れた石巻産の杉材ですね。一緒に活動している団体から注文をいただいて製作しているんですけど、個人向け販売はもうちょっと先になると思います。いずれは自伐林業で、蛤浜の木も使ってやりたい。カフェは軌道に乗ってきたので、狩猟と林業を、ちっちゃいけど六次化させて、販売を強化していこうというのが始まったとこなんですね。
―石巻エリアを紹介する情報誌ならばフリー・店売り問わず、ほとんどにカフェは載っているでしょう。一歩ずつ歩んできているような気がするからとても好ましく感じていました。
亀山 実は島根の群言堂が目標で、一度スタッフで研修に行ってきました。会長の松場大吉さんは「損する方と得する方があったら、必ず損する方を選ぶ」と言われていた。あえて選ぶと。そういう意味がだんだんわかってきました。大きな話は我々が目指す所とは違うなあと。あえて飛びつかずにいきたいんですよ。
―農家レストランでも加工品でも、能力がある人は、必ずビジネスチャンスを謳ってコンタクトされたことがあると言います。蜘蛛の糸みたいなのが降りてくることがあるんですよね(笑)。
亀山 時々ぴゅーっと(笑)。登り切る前にぷつんと切られたりしてね。チャンスを与えられて、幸運なことでもあるんだけど、足元から一段ずつ積み上げてきたつもりだし、そういうほうがいいです。限界集落でも残っていける方法が確立できたらと思うんですよ。
山形の東北芸術工科大学の協力で、3名の作家が一ヶ月づつの個展をひらく「鹿画廊」もスタートした。それぞれの作家が牡鹿半島を訪れ、感じたインスピレーションで作り上げた作品が並んでいる。
第1回は~1月17日(金)まで。お出かけを。
はまぐり堂公式ウェブサイトはこちら フェイスブックもあります。
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村ににぎわいを。まちに交流を。
過疎地域のあっちでもこっちでも続いているトライアル。成功事例とか、「移住定住者ン十人」と伝えられるスポットも耳にする。容易なことではありえない。それでも自分が直接たずねた中で、ここはなんとかなるのではないか、と感じられる場所がある。[3.11]の津波で被災した、牡鹿半島の蛤浜(はまぐりはま)だ。「なんとかなる」とは、自らの意志と職能で外からのにぎわいを常に集め、定住者を増やしていく目算が立っていく、ということ。震災前と同等の暮らしを取り戻すのではなく、新たなその土地らしい暮らしを整えていく創造でもある。拠点のカフェ「はまぐり堂」は、心地よさや「今っぽさ」が耳目を集めるけれど、足取りは地道そのものだ。思い描く未来に一歩ずつ近づいている、どこよりも強い足音を、蛤浜には感じる。
昨年の11月、季刊「住む。」52号の記事「再び、住む。」取材のためにたずねた。あれから1年。たまにコーヒーを飲みに立ち寄ってもいたが、代表の亀山貴一さんと話をするのは久しぶりだ。
―取材から一年経ちました。スタッフが新しくなったそうですね。
亀山 スイーツを作っていた1人が独立して、佐沼(石巻から北へ40kmのまち)にカフェを開きました。パンを焼いていた1人も卒業。新しく、三本木の天然酵母のパン屋さんで働きながら、鳴子で里山カフェとかイベント企画に取り組んでた人、体にやさしい食に興味がある方が入ってくれました(地名はいずれも宮城県内)。人数的には1人増の7人ですね。蛤浜創世の第二期に入ったように感じています。
―ゲストハウスに予定していた隣家もショップになりました。
亀山 はい、仙台で古道具などを商う「紫山(しざん)」と、石巻・牡鹿周辺のクラフトを扱います。それと、ダルちゃん(スタッフ島田暢さん)が作る家具とか、鹿皮や角のクラフトも始めました。今日はダルちゃんが鹿の解体をしに出かけているんですよ。
島さんは、はまぐり堂を立ち上げる当事からのスタッフ。重機免許を持ち、手先が器用で、建具や左官仕事、木工内装などを、オリジナリティたっぷりの発想でこなしてしまう、蛤浜のザッツ・クラフトマンだ。牡鹿半島に生息する鹿の肉は、これまでもカフェの香ばしいカレーに変身して人気を集めてきたが……。
亀山 この前、私とダルちゃんで狩猟免許とったんです。まずは罠の。いずれ鉄砲もと思っているんですけど。京都で狩猟サミットがあって行ってきまして、先進事例がいっぱい集まっていました。自分たちにもできる!って、確信して帰ってきたんです。
いま若い人が狩猟に興味を持っていますよ。猟師さんの高齢化が進んで、鹿は増えていますけど、環境を守りながら共存していく方法を探している人が全国にたくさんいる。これまで猟師さん頼みだったものを、自分たちの力で、駆除をしながら余すところなく活用していく道を探し始めています。皮細工や角クラフトも、ダルちゃんが作ってくれるんですけれども。
―僕も昨年、鹿の解体を見学して、鹿肉料理も食べる催しに参加してみました。イタリアンのシェフらと猟師さんの企画でしたけどね。遠いと思っていた狩猟が、身近なものに感じられました。
亀山 農業とか漁業は見えやすいけど、猟の世界はこれまでなかなか見えませんでした。野生動物だったものが、解体が進むほど、だんだんと美味しそうになっていくんですよね。肉の味も当初は固くて臭いのかなと思っていたけど、ぜんぜんおいしいんですよね。今度鹿肉の大和煮缶を売りだしました。「木の屋石巻水産」さんとのOEM連携で。
石巻、河北、女川の猟友会の共同で利用できるような施設・仕組みを作って、この地域資源を使っていけないかなという思いはありますね。北海道が最先端の地で、向こうではスーパーで売ってたり、子どもたちの給食に出されていたりするんですよ。ふだん食とか食育のレベルまで行ってる。店ではジビエとしての高い価値も保ちながら、子どもたちにも広めながら、生業として成り立っていくようにしたいですね。
―家具は蛤浜の木ですか?
亀山 地元の製材屋さんから仕入れた石巻産の杉材ですね。一緒に活動している団体から注文をいただいて製作しているんですけど、個人向け販売はもうちょっと先になると思います。いずれは自伐林業で、蛤浜の木も使ってやりたい。カフェは軌道に乗ってきたので、狩猟と林業を、ちっちゃいけど六次化させて、販売を強化していこうというのが始まったとこなんですね。
―石巻エリアを紹介する情報誌ならばフリー・店売り問わず、ほとんどにカフェは載っているでしょう。一歩ずつ歩んできているような気がするからとても好ましく感じていました。
亀山 実は島根の群言堂が目標で、一度スタッフで研修に行ってきました。会長の松場大吉さんは「損する方と得する方があったら、必ず損する方を選ぶ」と言われていた。あえて選ぶと。そういう意味がだんだんわかってきました。大きな話は我々が目指す所とは違うなあと。あえて飛びつかずにいきたいんですよ。
―農家レストランでも加工品でも、能力がある人は、必ずビジネスチャンスを謳ってコンタクトされたことがあると言います。蜘蛛の糸みたいなのが降りてくることがあるんですよね(笑)。
亀山 時々ぴゅーっと(笑)。登り切る前にぷつんと切られたりしてね。チャンスを与えられて、幸運なことでもあるんだけど、足元から一段ずつ積み上げてきたつもりだし、そういうほうがいいです。限界集落でも残っていける方法が確立できたらと思うんですよ。
山形の東北芸術工科大学の協力で、3名の作家が一ヶ月づつの個展をひらく「鹿画廊」もスタートした。それぞれの作家が牡鹿半島を訪れ、感じたインスピレーションで作り上げた作品が並んでいる。
第1回は~1月17日(金)まで。お出かけを。
はまぐり堂公式ウェブサイトはこちら フェイスブックもあります。
by kawa-usso
| 2015-12-24 13:29
| ●住めば都的トウホク。